夜間、休日に来院した軽症患者から特別料金を請求する病院が、全国で増えていることが、共同通信の取材で明らかになりました。
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軽症患者から特別料金 時間外救急の受診抑制で
正規の診療時間外の夜間、休日に救急外来を受診する軽症患者から数百−数千円の「特別料金」を徴収する動きが一部の公的病院などで始まっている。
医師不足が深刻化する中、軽症患者の安易な受診を抑制して重症患者の診療に一層力を入れ、勤務医の過重労働も軽減する狙い。円滑な実施には地域住民の理解と協力が欠かせず、地方議員からは重症患者まで受診を控えることを心配する意見も出ている。
特別料金徴収は以前から認められており、厚生労働省によると、2002−04年には全国で約150の医療機関が実施。徴収を近年始めた公的病院などは、公的医療保険に本来請求できる診療報酬の「時間外加算」分を患者の自己負担とする考え方で特別料金を徴収。金額は、導入前年度の時間外軽症患者の平均受診料とする病院もある。
共同通信の取材では、山形大病院(山形市)が一律8400円、磐田市立病院など静岡県の公立5病院は時間外加算額を基準に650−4800円の8段階、徳島赤十字病院(徳島県小松島市)が一律3150円を徴収。各病院は06年以降に順次開始した。
2008/10/20 18:15 【共同通信】
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10月15日にUPしました夜間、休日軽症急患に時間外料金の続報です。
共同通信の地道な取材で、夜間、休日軽症急患、所謂コンビニ受診に対策として、全国で特別料金を取る動きが広まっていることが、明らかになりました。
毎日新聞を筆頭に、医療に関する報道が頭を抱えるものが多い中、共同通信の報道は、有難いものです。今後も地に足がついた報道をしてくれることを期待します。
ところで、私の診療所も、夜間や休日などの急患も可能な限り対応しようとしております。しかし、それは中々困難です。
例えば、患者さん一人を診るためにも、診療機器の準備が必要です。レントゲンの現像液は、30度前後に予め温めて置かないと、上手く現像できません。コンプレッサーを稼動させ、タービンの圧力を安定させなければいけません。他にも滅菌機器など様々な道具が必要です。冷暖房の用意も忘れてはいけません。
患者さん一人診るためにも、診療所全部を稼動状態にしなければいけません。治療そのものは30分で済んでも、その準備と後片付けに其々30分から1時間かかると思ってください。診療所までの移動時間や身支度の時間も必要です。つまり、患者さん一人診るためには、最低3時間は必要になります。これは、私一人だけで見る場合ですが、スタッフを呼び出したりするとなると、もっと大変です。
歯科医院なら大概の仕事は一人でもどうにかなりますが、外科となると大変です。血液検査やCTを使ったりすると、一人を診るために10人単位の人間が動くことは、ざらにあるでせう。特にCTは、大量のX線写真を取るのです。現像の準備と時間を考えると、半日仕事になっても不思議はないでせう。そうなると、24時間対応を取れる大きな病院しか緊急体制は維持できないということになります。
これは別に医療関係に限った事ではありません。レストランなどを休日開けて貰って料理を食べることになっても、その準備は同じだと思います。そういう場合、特別料金は普段の何倍も取られてもおかしくありません。というより、そうしないと採算が合わないでせう。
食事や買い物は24時間できるところがあるじゃないかと、思う人は大勢いるでせう。
しかし、食事などで24時間対応できるところは、ファミリーレストランやファーストフードのお店です。そういうお店は、大概セントラルキッチン方式を採用しています。殆どの料理が完成一歩手前の状態でお店に運び込まれていて、一加工するだけでお客さんの前に出せるようになっています。買い物も同じです。基本的に陳列されているものを出すだけです。
板前さんが朝一番に市場に行って材料を仕入れてくるというお店が、24時間営業をするなどありえません。服を買うにしてもオーダーメイドで採寸をするテーラーが、24時間営業したら、職人さんが過労死するでせう。
現在、大量生産技術が進歩したお陰で、以前ならシェフがこだわって作った料理と似たような料理が、何時でも食べれるようになりました。衣服も異国の地で作られたと思えない品質のものが、以前なら考えられない値段で手に入ります。
医者や歯医者の仕事は、こういった大量生産の真似事は不可能です。何故なら患者さんの症状は、一人一人異なり、それぞれ別に対応しなければいけないからです。それは、職人さんの手作業の仕事に通じるものがあります。
職人さんは、休みの日に仕事を請けることは原則としてありません。無論、実情は違うかもしれませんが、建前としては断ることができます。しかし、医療の世界はそうはいきません。
この場合の問題は、医者は夜間や休日に対応した患者さんに責任があるように、翌日の朝一番に予約した患者さんにも責任を持たねばいけないことです。それまでに体力と気力を回復させるとなると、大変です。
それでも職業規範に支えられて、疲れきっ身体で無理やり笑顔を作って治療しているところに、モンスターペイシャントが来たら、廃業したくなっても無理は無いと思います。個人レベルの産科や小児科が、診療を止める背景には、こういう現実を毎日に送ることが、上げられます。
その現状から考えると、軽症患者から特別料金は、通常の治療費の3倍ぐらい貰っても、まだ足りないが、本音と言っていいと思います。
現行の健康保険制度だと歯科医院の場合、休日診療加算の保険点数は、190点です。つまり、患者さんが窓口で支払うのは、通常の治療費+570円に過ぎません。歯医者が受け取る収入も通常の治療費+1,900円に過ぎません。はっきり言いまして、赤字です。
私の様な診療所でしたら、私の人件費と光熱費+αで済みます。頻度も月に1度程度ですから、まだどうにかできます。しかし、大勢のスタッフを抱える病院でこれを恒常的にやられるとなると、大変なことになります。経営は火の車になるでせう。
つまり、コンビニ受診の増加は、医療体制を過労死へ追い込んでいるです。
その背景には、社会の様々な変化が上げられると思います。それについては、以前このBLOGでも取り上げました。宜しければ、こちらをご覧下さい。
長々と書いてきましたが、夜間、休日診療で軽症患者からの特別料金が、この程度の金額でどうにかなっていることが、我が国の医療制度の現状です。これは、現場を支える医療関係者の努力の末に達成しているギリギリの金額だと思います。一歩進めて言うと、医療制度の崩壊は、すぐ側まで近づいているのです。
どうか多くの方が、この現状を認識して、対応を改めてくれることを祈るのみです。
普段から健康に気を配る。常備薬を家庭に備える。市役所などのHPで、夜間休日対応している病院を確認しておく。一つ一つは、些細なことです。しかし、それは以前なら家の誰かが備えていたことです。
気がつくと、我々はそういう態度を忘れてしまいました。
そして、そのことを自覚しておりません。
もしものときの備えを、普段から心がけることが、医療制度の崩壊を救う一助になります。
それは、環境のためにCO2を考えることと何ら変わりありません。地球や環境のことが考えられるのなら、自分の身体や医療体制について考えてくれてもいいはずです。
皆を思いやる。ただそれだけのことなのですが、中々難しいことです。
どうか、皆様が健やかに暮らせ、医療従事者もその恩恵に賜れることを、願わずにいられません。
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<関連エントリー>
・夜間、休日軽症急患に時間外料金
・三波春夫が日本を滅ぼす?
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ここもお勧め(世界史コンテンツ医療編)
最初は毎日wの記事関係で飛んできたのですが、現職のお医者様からの視点での色々な話題、大変興味深く拝見させて頂いております。
特に本エントリーは身につまされるものがあったのでコメントさせて頂きました。
仰られる通り、文字通り日本医療の崩壊はすぐ其処まで迫っているのですね。。。コンビニ医療化というのはサービス提供側ではなく患者(サービス受領側)に問題がありますよね。
まぁ、こういうモラルのない人間達が溢れる世の中になってしまったのは戦後教育そのものであり、また、それに気付きながら何もしていない私達今の大人も同等の罪を背負ってるようなものですが。。。
モンスターペアレンツや昨今の無差別殺人など、どれも根本は人間の中身が歪んできてるのが原因かと考えています。環境問題以前に人間が人間でなくなって滅んでしまう、ということだけはなんとかして防ぎたいものですね。。。
それでは、今後も拝読させて頂きますので宜しくお願いいたします!
失礼致します。
こんにちは。レスありがとうございます。
>最初は毎日wの記事関係で飛んできたのですが、現職のお医者様からの視点での
>色々な話題、大変興味深く拝見させて頂いております。
私も毎日新聞ネタが、意外な反響を見せていて、驚いています。
恨まれてますねぇ、毎日新聞。
>特に本エントリーは身につまされるものがあったのでコメントさせて頂きました。
>仰られる通り、文字通り日本医療の崩壊はすぐ其処まで迫っているのですね。。。
>コンビニ医療化というのはサービス提供側ではなく患者(サービス受領側)に問題が
>ありますよね。
どんな物事もそうですが、100%誰が悪いということはまずありません。
医者側の不備を指摘するとすれば、救急医療に対する一般社会へのアピールが足りなかったことでせう。たとえば、小学校で病院へ行くときのルールぐら教えておく。母子教室で、夜間、緊急時の対処法をもっと教えておく。各家庭に小冊子を配布する。
無論、行政側と連携しなければ無理ですが、学校医の先生に年に1回、救急医療について講演をしてもらう程度の真似は、出来たと思います。
誰もが、その必要を感じる前に事件は起きてします。世の中は、難しいものです。
>まぁ、こういうモラルのない人間達が溢れる世の中になってしまったのは戦後教育
>そのものであり、また、それに気付きながら何もしていない私達今の大人も同等の
>罪を背負ってるようなものですが。。。
とりあえず、こうやって多くの方が、現状を認識できるようになったということは、大きな一歩だと思います。今まで、多くの方が知らなかったことを思えば、わずかでも進んでいると思います。
>モンスターペアレンツや昨今の無差別殺人など、どれも根本は人間の中身が歪んで
>きてるのが原因かと考えています。環境問題以前に人間が人間でなくなって滅んで
>しまう、ということだけはなんとかして防ぎたいものですね。。。
社会の仕組みというものは、変わっていくものです。
昔は、家族レベル、地域レベルで、様々な抑制がかかっていました。また、職業は今よりもサラリーマンが占める比率も低かったです。そのため、家業をやっている家は、今よりはるかに多くありました。
たとえば、八百屋さんの家では、店を9時に開くために、お父さんは朝3時におきて、市場へ仕入れに行く姿を、目の当たりにして育ちました。そのおかげで、休みの日や営業時間外に仕事をするということが、どれほど大変であるということが、子供にもわかったのです。
そういう体験が出来なくなった現代では、社会の仕組みを実感できず、我侭に振舞う人が増えるのも、仕方がないのかもしれません。
>それでは、今後も拝読させて頂きますので宜しくお願いいたします!
>失礼致します。
拙い文章ですが、そう言っていただけると、励みになります。
マイペースでやっていきますので、ご贔屓のほどを。