2010年12月10日

東北大が虫歯や歯周病菌を死滅させる殺菌法を開発



東北大が、虫歯や歯周病菌を死滅させる殺菌法を開発しました。

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虫歯と歯周病菌99・99%死滅…東北大新手法


 虫歯や歯周病などの原因菌をほぼ死滅させられる新たな殺菌法を、東北大大学院歯学研究科の菅野太郎助教らのチームが開発した。


 治療機器の開発も進められ、画期的な治療法が数年以内に実用化できるとの期待が高まっている。論文は米国の代表的な薬学雑誌12月号に掲載された。

 菅野助教らは、虫歯菌や歯周病菌など4種類の口腔(こうくう)内細菌と過酸化水素の水溶液に、目に見える波長のレーザー光を照射。強い殺菌作用のある物質「活性酸素」の一種を発生させ、3分以内に99・99%以上の菌を死滅させたという。人体への影響はないとみられ、治療が難しい歯周病の奥深い病巣を殺菌することなどへの応用が期待される。

 研究チームは、精密機械製造「リコー光学」(岩手県)などと、過酸化水素水とレーザー光を同時に出す歯周病用の治療機器の開発を進めている。今年度中には動物実験を終え、2011年度以降に臨床研究に入る予定だ。

(2010年12月9日10時11分 読売新聞)

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東北大が、虫歯や歯周病菌の原因菌を死滅させる新たな殺菌法を開発しました。
2chなどを眺めていますと、『歯科医が敗者になるな』というレスがあり、そのセンスに脱帽しました。

実が、虫歯や歯周病の原因菌を死滅させる殺菌法は、定期的に新しいものが生まれています。最近ですと、パーフェクトペリオという洗口剤の一種が発売され、話題になりました。

ところが、この種の殺菌法がメジャーになることは、ありませんでした。

それ以前に、この種の殺菌法が発表される度に、疑問に感じることがあります。

虫歯菌や歯周病菌がわかっているのなら、何ゆえ、虫歯菌や歯周病菌を対象とした抗生物質を開発しないのでせうか?

例えば我が国では、結核がは国民病と呼ばれるほど猛威を振るいました。しかし、ストレプトマイシンという抗生物質の発見、BCGという予防法の確立の結果、結核による死亡率は劇的に低下しました。近年、薬剤耐性ができた結核菌によって、結核の患者が増えておりますが、それは別問題です。

この他にも、蓄膿症や盲腸も、原因菌が特定でき、抗生物質が発見されました。以前なら手術しかなかった盲腸の治療も、抗生物質の存在のお陰で、手術なしで治療できるケースが増えております。

余談ですが、盲腸の手術というのは開腹手術の中では、最も簡単な手術です。このため、新人の外科医の最初の手術として、行われれていました。盲腸の抗生物質の発見のお陰で、この手術が減り、外科医の教育に問題が生じているという話があります。

ともあれ原因菌を特定し、抗生物質を発見できれば、感染症の治療法は劇的に変わります。
虫歯や歯周病は、原因菌が特定できています。

それなのに、抗生物質の発見ではなく、殺菌法の開発なのでしょうか?

それは、虫歯や歯周病菌の感染様式に起因します。

虫歯や歯周病の感染様式は、常在菌の日和見感染だからです。

例えば、インフルエンザの感染様式は、飛沫感染か接触感染です。
インフルエンザの感染者がした咳には、インフルエンザウィルスが潜んでいます。
その飛沫を吸い込むと感染すると言うわけです。

これに対し、常在菌は、我々の身体に共生しています。
人間は、何十億、何百億という細菌と共生しています。これを常在菌といいます。
一番わかりやすい例は、腸内に済む乳酸菌でしょう。
乳酸菌は、腸内で糖を分解し、消化吸収を助けてくれます。
このように我々は、様々な菌と共生関係にあります。

口腔常在菌は、口の中で共生している菌というわけです。

何らかの理由で免疫力が低下すると、この共生関係が壊れ、常在菌が宿主を攻撃する場合があります。これが、日和見感染です。

つまり、日和見感染は、原因となる菌は常に存在するのです。
何らかの理由で環境が崩れ、虫歯菌や歯周病菌などの特定の細菌が繁殖してしまうことが、問題なのです。

このことが、虫歯菌や歯周病菌の抗生物質が発見されない理由になります。
虫歯菌や歯周病菌は、口腔常在菌の一種です。虫歯菌や歯周病菌と似ているが、病原性のない無害な菌が、他にも沢山居るのです。虫歯菌や歯周病菌に有効な抗生物質は、これらの口腔常在菌にも効果がある可能性が高いです。つまり、虫歯菌や歯周病菌を退治しようとすると、これらの口腔常在菌まで退治してしまうのです。

口腔常在菌は、口腔内で繁殖しています。このため、外部から細菌が進入してきても、中々繁殖できません。謂わば、生体防衛網の最外縁を守っているのです。

雑木林の中に、種を蒔いても、他の植物に邪魔されて中々成長できません。
ですが、雑木林を切り取って空き地にしたら、一面セイダカアワダチソウ が生えてきたりします。

つまり、下手に虫歯菌や歯周病菌にたいする抗生物質を使用すると、それ以外の有的な口腔常在菌が死滅し、生体防衛網に大穴が開き、トンでもない病気になりかねないのです。虫歯や歯周病にはならなかったけど、インフルエンザに罹って、お亡くなりになる。
そういう事態が生まれかねないのです。

虫歯菌や歯周病菌を口腔内から根絶することは、メリットよりデメリットが大きくなる可能性が高いのです。だから、虫歯菌や歯周病菌の抗生物質は、開発されないのです。

こういう事態を防ぎ、虫歯や歯周病を予防するとなると、虫歯菌や歯周病菌が、大いに繁殖している場所だけを殺菌するという方法が、出てくるわけです。

この方法ですと、殺菌できるのは、口腔内の一部だけになります。それゆえ、患部の虫歯菌や歯周病菌を殺菌しても、口腔内の他の部位で繁殖している虫歯菌や歯周病菌が再感染、最繁殖するという事態になります。

つまり、一度この処置を受けると、定期的に同じ処置をしないと、予防できないという答が出てきます。


……もっと歯医者さんに行かないと予防できないという訳です(^^;。


私としては、虫歯菌や歯周病菌を殺菌するよりも、虫歯菌や歯周病菌が繁殖できないような環境にする方が、効率がいいと思います。実際、私の診療所でも、そういう治療を行っております。

興味のある方は、足を運んでいただけると、嬉しく思います。


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posted by Jinguzi at 11:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 歯科 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わかりやすく解説して頂きありがとうございました。
このニュースに少し期待しましたが…
歯周病は厄介な病気ですね。
憂うつです。
Posted by しろ at 2011年06月06日 06:47
しろ様

こんにちは。レスありがとうございます。
近いうちに、歯周病がどうして治らないのかをお話しようと思います。その際は、読んでいただけると嬉しいです。

Posted by Jinguzi at 2011年06月11日 10:40
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