2011年04月01日

プルトニウムで酷いデマを飛ばす上杉隆氏



『笑えないエイプリルフール』のネタをアップした後、上杉隆氏が、このツイッターを書いた元ネタと思える記事を発見しました。

読んでみたら、あまりの酷さに目眩がしました。
本来なら放置すべきですが、あまりにも酷いので、少し論じてみようと思います。
問題の記事は、こちらです。長文ですので引用先をお読みください。

日本の大手メディアと欧米メディア、プルトニウム報道の“温度差”

あまりにも酷い箇所を、以下に順次引用して、論じてみます。



>少し考えれば、「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」と「プルトニウムの
>危険性」が別問題であることは誰にでもわかる。

ごめんなさい。私には『「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」と「プルトニウムの危険性」が別問題』がさっぱりわかりません。

プルトニウムは、危険な物質です。なぜ危険かというと放射性物質だからです。
放射性物質が何故危険かというと、放射線を出すからです。放射線は物体を通過します。その際に、通過する物体にダメージを与えます。よって、放射線が物体に届かなければ、ダメージを与えることはできません。

プルトニウムは、放射線の一種であるα線を出します。α線を遮断することができれば、プルトニウムの危険性はずっと小さくなります。そして、α線はもっとも簡単に遮蔽できる放射線です。α線の問題さえ解決できれば、プルトニウムは、重金属の一種にすぎません。放射線さえどうにかできれば、扱いは鉛と大差がありません。

鉛をはじめとする重金属の多くは、人体に有害です。毒物の一種です。ですが、毒物というものは、ある一定量飲まない限り毒性を発揮できません。となると、一定量以下の毒物祖摂取しても危険ではあるが、健康に害をなさないという答がでます。

そして、放射線は、距離に反比例して弱くなります。つまり、プルトニウムは、ある程度の距離を置くか、適切な遮蔽さえおけば、人体に害はなくなります。

人体に害になるのは、上記の処置を行えない場合、あるいは体内に取り込み、定着した場合です。体内に定着すると、距離が0になるため、プルトニウムが発するα線が、定着した部位にダメージを与えます。

ただ、普通重金属は食べても殆ど吸収されません。というより、自然界に殆ど存在しないプルトニウムを、大量に食べるという事態を想定すること自体が困難です。人体に害をなすほど大量のプルトニウムが含まれた食品となる生物は、一体どんな生物なのでしょう?
当然、そんな生物は存在するとしても極少数でしょう。食品としてプルトニウムを大量に摂取することは不可能です。

よって、プルトニウムが人体に害を与えるケースを想定すると次の二つです。

@プルトニウムが大量に存在し、遮蔽が不可能である。

Aプルトニウムを呼吸時に吸い込み、呼吸器に定着する。

@のケースは、それこそ原子炉が崩壊して、プルトニウムがキログラム単位でばら撒かれない限り、ありえないでしょう。それが起こったのがチェルノブイリです。
福島の原発は、色々と言われていますが、原子炉そのものは健在です。プルトニウムは、原子炉周囲の冷却水から漏れたと考えられています。よって、漏れた量は少量です。何よりそのような場所に居る人は、防護服を着ているはずです。

このため、@のケースはありえません。あるとしても、原子炉周囲の限られた場所で、何らかの理由で防護服を着ていない人だけでしょう。

Aのケースは、確かに危険です。タバコを吸えば、ヤニが肺に溜まるように、プルトニウムを吸い込めば、呼吸器に定着します。しかし、プルトニウムは比重が大きく、長期間大気を漂うことは、ありません。原子炉がどうにか保っている現在では、原子炉の周囲以外ありえないでしょう。

少なくとも、この記事にある場所にそんなに大量なプルトニウムが大気を漂っているとは思えません。実際、プルトニウムが測定されたのは、大気中でなく、地中です。土と混じっているものを、どうやって吸い込むのでしょう?

よって、測定した場所でプルトニウムが、健康に害を与える危険性が低いと断定していいと思います。

つまり、プルトニウムは、「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」ので、控えめに言っても、今回プルトニウムを測定した場所では、短時間では健康に害が出る可能性は低いといっても、問題はないとおもいます。少なくともそう主張する科学的根拠が存在します。

上杉隆氏は、何を持って、『「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」と「プルトニウムの危険性」が別問題であることは誰にでもわかる。』というのでせう?

具体的な根拠を示さないで、こういうことを書くことは、極めて無責任です。


>にもかかわらず、なぜ安全性を強調しなければならないのか。そもそもプルトニウムの
>測定の単位だけが、これまでの放射性物質の測定の「一平方メートル当たり」ではなく、
>「一キログラム当たり」になっているのも不思議だ。

プルトニウムは、危険な物質です。しかし、誰もその細かい性質を知りません。
そして、どんな危険物質でもある一定量を越さないと、毒性を発現できません。
これは、毒物や薬物の基本性質で、医学や薬学を学んだ人間の基礎知識です。
ただ、そのことを一般の方は知りません。そして、そういう薬物一般の性質を説明する時間は、ほとんどないでしょう。

となると、現時点でできることは、危険がないことを示すことです。
だから、安全性を強調することは、極めて当たり前です。
当たり前のことを、おかしいと疑問を発するのは、上杉隆氏が原子力の何処が危険なのか、薬物の特性を理解できていないだけでは、ないでしょうか?

測定の単位が違うのだって、不思議はないでしょう。
おそらく測定方法が違うのだと思います。

放射性ヨウ素や放射性セシウムは、プルトニウムに比べて、原子量が小さいです。
このため、放射性ヨウ素や放射性セシウムは、大気に漂う期間が長いです。

これに対してプルトニウムは、原子量が大きいです。比較的短期間で地面に落ちると思います。実際、プルトニウムは遠くに飛んでおりません。

カブトムシと蝶々の捕まえ方は違います。性質の異なる物質なのだから、測定方法が違っても不思議はないと思います。

まさかと思いますが、上杉隆氏は、放射性物質にガイガーカウンターを向ければ、放射性物質の種類がわかるとでも思っているのでしょうか?

というより、上杉隆氏はジャーナリストだと思いました。
疑問に思ったのなら、原子力関係者にその違いを取材して調べればいいと思います。
なにより、上杉隆氏は、記者クラブの弊害を声高に主張しているのです。その方が原子力の記事を書くのに、専門家に取材をしていないという事態はありえないと思うのですが、私の疑問はおかしいのでせうか?


>大気に撒かれた放射性物質が深く土の中に潜るのには当然に時間がかかる。なぜ表面で
>はなく、土壌を掘り起こしての計測になるのか。パソコンの前に座ってばかりいる“I
>Tジャーナリスト”に調べてもらいたいものだ。

何故ここでITジャーナリストを揶揄するのか、私には理解できません。
まず櫂より始めよよろしく、疑問に思ったのなら自ら取材すべきだと思います。

というより、ここまでの記述で、上杉隆氏が原子物理学や医学、薬学の素養が殆どなく、そしてそのことを補うために勉強したり取材したりする気もないということが、分かります。というより、本来は政治分野を専らにしている上杉隆氏が、何ゆえ原子力の記事を書くのでしょう?

専門家というのは、普通自分の専門外の分野に手を出すのを、非常にためらいます。少なくとも専門外の分野に対して慎重になります。何故上杉隆氏が、専門外の分野に自信を持って記事を書けるのか、理解に苦しみます。

私はジャーナリストというものは、事実を取材し、根拠を示して物事を客観的に説明してくれる職種だとおもっております。ところが上杉隆氏は、事実の取材をせず、根拠を示しませんし、物事を客観的に説明しておりません。

つまり、自分が聞いたことを主観的に書いているだけです。

それの何処が、ジャーナリストなのでしょうか?

この後、記事は、プルトニウムは食べてもすぐに排出されるので安全であるという動燃こと動力炉・核燃料開発事業団が作った宣伝ビデオを元に、原子力を非難しています。

上記したように、人体に有害となる毒性を発揮するには、ある一定量が必要です。
一定量を超えない限り、毒物は毒性を発揮できません。プルトニウムは毒物の一種です。
毒物の特性を理解し、一定量以下であれば、摂取しても危険はありません。

少なくとも、動燃が作ったビデオには、それなりの科学的根拠があります。プルトニウムの性質を理解し、危険が出ない範囲で扱えば、安全だと主張しているだけです。

それは別にプルトニウムに限らず、どんな物質であっても、その性質を理解し、安全な範囲で扱えば、問題ないのは当たり前です。


……それでも、プルトニウムを食べても安全だと主張するセンスは、アレだと思います(^^;。


ここでひとつ事実を指摘します。
動力炉・核燃料開発事業団と東京電力は、まったくの別組織です。

動力炉・核燃料開発事業団が作ったプルトニウムの安全性を主張するビデオを根拠に、今回の事態を追求するというのは、明らかに筋違いです。

動力炉・核燃料開発事業団作ったビデオが問題なら、動力炉・核燃料開発事業団に苦情を言えばいいのです。それをせずに、このような真似をするのは、論点のすり替えです。

まったく別の事象を付和雷同して、あたかも同じように見せる手法は、ジャーナリストがしていい手法ではありません。これをおこなうのは、デマゴーグです。

そして、記事はこの後、欧米の報道姿勢を引き合いに出して、次のように論じています。


>欧米、とくにフランスを筆頭とした国々は、日本のことを悲惨な震災に見舞われた被災
>国というよりも、原子力エネルギーを管理できない核犯罪国家とみなし始めている。
>
>このままではG8の一員である先進国としてどころか、放射能汚染を放置する無政府状態
>の最貧国として扱われる日が近いのかもしれない。

驚くべきことは、このように主張する欧米の記事を一切引用していません。
根拠を一切示さずに、欧米諸国が、日本が核犯罪国家であると、北朝鮮やイランと同列に認定しています。

論理の飛躍がありすぎます。
プルトニウムを大気中に拡散させた国は、日本だけではありません。
少なくともプルトニウム型原子爆弾を作り実験を行った国は、プルトニウムを大気中に拡散させています。先進国では、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアが当てはまります。
フランスが、つい最近まで南洋で核実験し、大気中に放射性物質で汚染した過去を無視して、日本が原子力エネルギーを管理できない核犯罪国家と主張するほど、厚顔無恥とは思えません。

さらに言うのであれば、アメリカのスリーマイル島の事故や、旧ソ連のチェルノブイリの事故を欧米諸国は、どのように扱い、どのように報じたのでしょうか?

チェルノブイリの事故は、冷戦崩壊前で、ソ連の情報は鉄のカーテンの向こうでした。
共産主義国家で、鉄のカーテンを引いていたソ連が、現在の日本ほど情報をオープンにしていたとは、とても思えません。

少なくとも現在の日本は、当事のソ連よりもはるかに情報をオープンにしています。

当事のソ連を『放射能汚染を放置する無政府状態の最貧国』として扱った国があったのでしょうか?スリーマイル島の事件当時のアメリカを『放射能汚染を放置する無政府状態
の最貧国』として扱った国があったのでしょうか?

大体、天災もなしに事故が起こったチェルノブイリやスリーマイル島と、マグニチュード9の地震と10mを超える津波が襲った結果生じた福島の原発事故を同列、いや同列以下に論じることに、無理がありすぎます。

これらの事象を検証しようと思えば、各国への取材が絶対必要なはずです。
上杉隆氏は、この短期間に、どうやって検証を行ったのでしょうか?

これらの検証を行わず、論拠も示していないということは、上杉隆氏はすべて物事を主観で主張しているとしか判断できません。

そのことが明らかになるのが、最後のまとめです。


>それでも、東京電力と政府と大手メディア、そこに群がる御用評論家たちは、プルトニ
>ウムは「危険ではない」と強弁している。

そんなことは、誰も言ってはいません。
『プルトニウムが危険ではない』のではなく、『現在計測されているプルトニウムは、人体に悪影響を及ぼす可能性が低い』と言っているのです。両者は、まったく別です。この区別をつけられないのか、意図的に区別をつけていないのでしょうか?


>最後には、日本人はプルトニウムに耐性があるのだ、などと言い出して、これ以上、
>世界に恥をさらさないことを祈るばかりだ。

いや、ある程度科学知識のある人間が、この記事を読むと、恥をさらしているのは上杉隆氏だと思います。プルトニウムが毒物の一種である以上、どんな生物でも毒を発揮できる一定量までは耐性があるのですから。

つまり、日本人が生物である以上、プルトニウムに対してある程度の耐性があるのは、科学的な事実なのです。少なくとも、そう主張するだけの科学的根拠があります。
科学的事実だから、誰も大声で言わないだけです。
1+1が2であることを大声で主張するのは、小学校の授業だけです。

事実を取材し、根拠を示し、物事を客観的に話すのがジャーナリストです。
そのためには、取材した事象に対して、深い知識が必要なはずです。

しかし、私が今まで論じたように、上杉隆氏は、原子力、医学、薬学の知識があるとは思えません。事実を深く取材した形跡がありません。根拠を一切示していません。物事を主観的に話しています。そしてその結論が、明らかに斜め上を言っています。
ネットで、『斜め上杉』と異名を貰うのも当然だと思います。

以上の点を持ちまして、少なくとも原子力、医学、薬学に関しては、上杉隆氏はジャーナリストでなく、デマゴーグだと思います。

上杉隆氏は、せめて自分の専門外の記事を書くのであれば、もう少し慎重になるべきだと思います。


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posted by Jinguzi at 22:39| Comment(8) | TrackBack(0) | NEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
目立ちたくてしょうがないみたいですね。

少量でもやばいようですが、上杉さんは何処へ退避するのかな?
地球の外?
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2007Artifi_Radio_report/Chapter5.htm

ここからも、退避しろと言うのかな
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/handle/10069/6425
Posted by toshi at 2011年04月04日 00:18
私も上杉氏には同じ見解です。
上杉氏に限らずに、今回の原発事故でジャーナリストや政治家、一部の経済人の人間性や中身が垣間見えた気がします。
原発の方向性の是非が問われるのは必須だと思いますが、胡散臭い自然エネルギー推進や今まで相手にされなかった学者などの批判は目に余る物がありますね。
Posted by at 2011年06月10日 17:14
私も上杉氏には同じ見解です。
上杉氏に限らずに、今回の原発事故でジャーナリストや政治家、一部の経済人の人間性や中身が垣間見えた気がします。
原発の方向性の是非が問われるのは必須だと思いますが、胡散臭い自然エネルギー推進や今まで相手にされなかった学者などの批判は目に余る物がありますね。
Posted by K at 2011年06月10日 17:16
K様

こんにちは。レスありがとうございます。

ジャーナリストや政治家についての見解は同意しますが、上杉氏については同意できません。

この記事では散々プルトニウムの危険性を謳っておきながら、そのことは綺麗さっぱり忘れて、現在はストロンチウムの危険性を謳っております。その記事もストロンチウムの半減期の長さの危険性を語っても、ストロンチウムの生体半減期に対する言及が全くありません。

放射性物質が生体に影響を与える場合、様々なファクターがあります。その中で、自分が政府を追及するのに都合がいい点だけを取り出し、あげつらう姿勢には同意できません。

上杉氏の過去の自民党政権への記事と重ね合わせると、上杉氏の人間性について色々と疑問符がつくと言うのが、私の本音です。

Posted by Jinguzi at 2011年06月11日 10:48
こんにちは。お医者様からの貴重な情報に感謝致します。
上杉隆氏の懸念を否定できる根拠を探していてこちらに辿り着きました。
本文中で気になる点がありましたので恐縮ですが確認させて下さい。

@プルトニウムの拡散距離について
「プルトニウムは比重が大きく、長期間大気を漂うことは、ありません。」
とありますが、
「プルトニウム型原子爆弾を作り実験を行った国は、プルトニウムを大気中に拡散させています。」
という記述と矛盾しませんか?

他国の核実験で生成されたプルトニウムが国内でも観測されているようです。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110415/dst11041510360018-n1.htm

もしよろしければ、長期間漂う事が無いと
断言できるだけの根拠をお示し頂けないでしょうか?

Aプルトニウムを吸い込む可能性について
「土と混じっているものを、どうやって吸い込むのでしょう?」
とありますが、土が風で舞い上がったものを吸い込むというケースが
考えられると思います。
プルトニウムの放出するアルファ線は大気中では数センチしか飛ばない
ため、「大気中のプルトニウム濃度」を測定する事は非常に困難です。
「Aプルトニウムを呼吸時に吸い込み、呼吸器に定着する。」
事を防ぐためにはどのような測定を行えば良いとお考えでしょうか?

Bプルトニウムの人体への影響について
「日本人が生物である以上、プルトニウムに対してある程度の耐性があるのは、科学的な事実なのです。少なくとも、そう主張するだけの科学的根拠があります。」
とありますが、
「プルトニウムは、危険な物質です。しかし、誰もその細かい性質を知りません。」
という記述と矛盾しませんか?
どのくらいの量のプルトニウムを吸い込むとどのくらい危険なのか、
という事について十分な精度のデータが得られていないのであれば、
『現在計測されているプルトニウムは、人体に悪影響を及ぼす可能性が低い』
とも言えず、慎重な対応が必要になると思いますがいかがでしょうか?
Posted by T at 2011年06月19日 14:10
T様

こんばんは。レスありがとうございます。

>本文中で気になる点がありましたので恐縮ですが確認させて下さい。
簡単ですが、私のわかる範囲でお答えします。

>もしよろしければ、長期間漂う事が無いと
>断言できるだけの根拠をお示し頂けないでしょうか?
簡単です。原爆の実験で飛び散った放射性物質と、原発の事故で漏れた放射性物質では、与えられた運動エネルギーの量が全然違うからです。

たとえば、最初期のプルトニウム原爆であるファットマンですら、長崎市を焼け野原にしました。それに対して、福島の原発事故は、水蒸気爆発です。原発の建物が骨組みだけですが残っています。核分裂による爆発とでは、エネルギー量がケタ違いです。

原爆は、放射性物質を含んだ塵を成層圏まで大量に吹き飛ばします。成層圏まで届けば気流に乗って長距離を飛散します。これに対して、原子炉から漏れた放射性物質では、成層圏まで飛散する量は当然のことながら限られます。成層圏まで届く放射性物質が少なければ、短時間で落ちるという答が出ます。

幼稚園児とプロ野球選手とでは、投げるボールの距離が違って当然というだけの話です。

>Aプルトニウムを吸い込む可能性について
>「土と混じっているものを、どうやって吸い込むのでしょう?」
>とありますが、土が風で舞い上がったものを吸い込むというケースが
>考えられると思います。
確かにこの可能性は考えられます。そのことを説明しなかったのは、不親切でした。
その点はお詫びします。

問題は、プルトニウムを吸い込むことではなく、プルトニウムを危険な量まで吸込みことです。少なくとも報道されたプルトニウムの量では、短期間で問題になる量ではありませんでした。地面に落ちたプルトニウムが風にのって舞い上がったとしても、その量は地面に落ちた量より少ないことは間違いありません。よって、健康被害がでる可能性は低いという答が出ます。

>プルトニウムの放出するアルファ線は大気中では数センチしか飛ばない
>ため、「大気中のプルトニウム濃度」を測定する事は非常に困難です。
>「Aプルトニウムを呼吸時に吸い込み、呼吸器に定着する。」
>事を防ぐためにはどのような測定を行えば良いとお考えでしょうか?
ご質問は答はありません。何故かというと物質を特定するのには時間がかかるのです。
元素分析は資料作成から特定まで何日もかかります。その場で計測できるのは、放射線だけです。よって、放射線が危険量に達するか否かで判断するしかありません。

>「プルトニウムは、危険な物質です。しかし、誰もその細かい性質を知りません。」
>という記述と矛盾しませんか?
これは、危険というものをどのように捉えるかで答えが決まっています。
物事を危険と安全を絶対論で論じると、ご指摘のように矛盾します。
しかし、危険と安全を相対論で論じると答は違います。

プルトニウムは危険な物質ですが、対処法を知っていれば、危険から逃れることができる。
対処法を知っていて、そのように行動すれば安全です。ですが対処法を知らなければ、危険です。一般論からいえば、プルトニウムというより放射性物質の性質を知られていません。だから、一般論でいえば危険です。それだけのことです。

>どのくらいの量のプルトニウムを吸い込むとどのくらい危険なのか、
>という事について十分な精度のデータが得られていないのであれば、
>『現在計測されているプルトニウムは、人体に悪影響を及ぼす可能性が低い』
>とも言えず、慎重な対応が必要になると思いますがいかがでしょうか?
その理屈でいくと、『道を歩くと交通事故にあう可能性は否定できない。だから、道を歩くべきではない』という暴論を主張できます。危険を避けるために、戦車で町を闊歩するわけにはいきません。それだけの話です。

簡単ですが、このあたりで。ご理解いただけると嬉しく思います。
Posted by Jinguzi at 2011年06月20日 02:14
Jinguzi様

コメントにて質問させて頂いた者です。
非常に冷静かつわかりやすいご回答を頂きありがとうございます。
仰ることの論旨は大変よく理解できました。

ただ、私の調べた限りの情報と一部相違があるようですので、
その点について再度確認させて頂ければと思います。

@プルトニウムの拡散距離について
>成層圏まで届く放射性物質が少なければ、短時間で落ちるという答が
>出ます。
とのことですが、黄砂と一緒に大陸のプルトニウムが日本に飛来している
というデータがあるようです。

『1985年以降は大気圏中国核実験による成層圏フォールアウトの影響がなくなったにも拘わらず、成層圏フォ−ルアウトから期待されるレベルより高いプルトニウム降下量が観測され現在に至っている。』

http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2007Artifi_Radio_report/Chapter5.htm

この場合、元の爆発の規模の大小に関わらず、風向き次第ではプルトニウム
が拡散するという事もあり得ると考えられますがいかがでしょうか?
勿論拡散の効率という点では爆発の規模に相関は見られると思いますが、
少なくとも「長期間飛ばない」とは一概に言えないのではないかと思います。

Aプルトニウムを吸い込む可能性について
>少なくとも報道されたプルトニウムの量では、短期間で問題になる量では
>ありませんでした。
とありますが、先生も指摘されているようにプルトニウムの検出・分析には
非常に困難な作業を伴うため、まだごく一部の地域でしかプルトニウムの
汚染調査は行われていません。
例えば文部科学省が作成したセシウムの汚染マップを見る限り、放射性物質
による土壌の汚染度合は原発からの距離に対して単純な相関にはならず、
部分的に汚染の濃い「ホットスポット」が形成される傾向にあるようです。

http://www.asahi.com/national/update/0426/TKY201104260402.html

従ってごく一部の地域で評価を行っただけではその場所がたまたま濃度の
薄かった場所である可能性を排除することができず、より広範囲の検査結果
を待たなければ安全性の根拠とすることはできないと思われるのですが、
いかがでしょうか?

Bプルトニウムの人体への影響について
>プルトニウムは危険な物質ですが、対処法を知っていれば、危険から逃
>れることができる。対処法を知っていて、そのように行動すれば安全
>です。
とのことですが、これは
「プルトニウムの細かい特性は分かっていないが、他の一般的な放射性物質
 と同じように対処(距離・遮蔽・時間に注意)すれば問題は無い」
ということでしょうか?
プルトニウムが今回の原発事故で放出されたヨウ素やセシウムと決定的に
異なるのは、
・ガンマ線を殆ど出さないため検出が難しく汚染状況を調べることが困難。
・内部被曝で特にダメージの大きなアルファ線を放出する。
という2点にあると考えます。
携帯式のガイガーカウンターで検出できれば汚染の濃い場所を避け、適切に
対処することも可能になると思いますが、プルトニウムのようなアルファ
核種はガンマ線で「見えない」事が対処を難しくしています。

交通事故の例えを出して頂きましたが、「見えない車」がびゅんびゅんと
行き交っている「可能性」のある場所に近付こうと思われるでしょうか?
広範囲の汚染状況が明らかになるまではひとまず距離を取る、もしくは
マスクをする等、できるだけの対処をしておき、汚染状況が明らかに
なってから初めて「安全」と言えば良いのではないでしょうか?
少なくとも今の時点では安全性を強調できるだけの根拠が不足している
ように感じております。
広範囲でのプルトニウム汚染調査が一刻も早く実施される事を願うばかりです。
Posted by T at 2011年06月20日 22:50
T様

こんにちは。レスありがとうございます。

>勿論拡散の効率という点では爆発の規模に相関は見られると思いますが、
>少なくとも「長期間飛ばない」とは一概に言えないのではないかと思います。
そりゃ、一概には言えません。ですが、黄砂のようには大量に飛ばないとは断言できます。
それは、中国の核実験場のあった砂漠地帯と福島の地理条件がまったく違うからです。
中国の砂漠地帯は、とっても高いところにあります。下手すると富士山より高いです。
しかも砂漠化はドンドン進んで、北京も砂漠になるのは時間の問題と言われております。

風に舞いやすい砂が高いところに一杯あるんです。だから放射性物質が混じった砂は、簡単に成層圏まで舞い上がります。だから日本まで届くのです。では、福島というより日本の何処に砂漠があるのでしょう?

日本で一番砂漠に近い鳥取大砂丘ですら、緑化が進んで保存運動が起こっているくらいです。しかも福島原発は海岸にあります。当然低地です。プルトニウムを含んだ土が舞い上がっても、その量は少なく、飛ぶ距離は短いと断言できます。極少量は遠くまで飛ぶでしょうが、極少量でしょう。

>従ってごく一部の地域で評価を行っただけではその場所がたまたま濃度の
>薄かった場所である可能性を排除することができず、より広範囲の検査結果
>を待たなければ安全性の根拠とすることはできないと思われるのですが、
>いかがでしょうか?
100%の安全以外は安全ではないと言うのであれば、ご指摘の通りです。
それに異論を挟む気はありません。ですが、100%の安全以外は安全でないと主張する気は微塵もありません。その辺りをご理解頂けると嬉しく思います。

>「プルトニウムの細かい特性は分かっていないが、他の一般的な放射性物質
> と同じように対処(距離・遮蔽・時間に注意)すれば問題は無い」
>ということでしょうか?
プルトニウムというより、放射性物質の性質を殆どの人が知りません。このため、無知が恐怖心を増幅してパニックを起こしています。だから、その性質を知りましょうというのが、このシリーズの趣旨です。それを今更聞かれても困ります。
上杉隆氏を取り上げたのは、そのデマゴーグがあまりにも酷すぎたからです。

>広範囲でのプルトニウム汚染調査が一刻も早く実施される事を願うばかりです。
広範囲のプルトニウム汚染調査がされない理由はいくつも思い浮かびます。
確かにプルトニウムの検出が難しいこともその理由にあるでしょう。現実問題としては、プルトニウムよりも危険性が高い放射性物質があるからそちらを優先しているが、一番大きいと思います。

実際、チェルノブイリの原発事故でもヨウ素やセシウムの被害が報告されていますが、プルトニウムによる被害は報告されていません。というより、通常の原子炉ではプルトニウムは少量です。通常はウランが核燃料の主成分です。プルトニウムは人工元素で、極一部の例外を除いては、天然では存在しません。日本では段階的にプルトニウムが使われ始めているのが現状です。

逆を言うとプルトニウムが原子炉以外で発見されると言うことは、原子炉が非常に危険な状態であることを示しています。原発事故では、末期症状です。だから大騒ぎしているんです。

健康被害で言えば、プルトニウムよりも危険な放射性物質はもっと一杯あります。過度にプルトニウムだけを心配するのは、あまりメリットがないと思います。
Posted by Jinguzi at 2011年06月22日 11:37
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