2011年04月14日

今更聞けない原子力の基礎知識C 放射性物質の被害が分かりにくい理由


前回より間隔があきましたので、テーマを見直して続けたいと思います。

福島の原発事故で、国際評価尺度でレベル7に相当すると暫定的に決められました。
ただ、この意見には異論が多く、あのロシアですらおかしいと言っております。
逆にアメリカなどから異論が出ていません。アメリカは以前から深刻だと言っておりましたので、この決定にはアメリカの意見も加味されている可能性があります。

ともあれ、推論の粋をでません。どのようになるかは、経過を見守りたいと思います。

今回は、福島の原発事故以来、政府の発表で定番と化した台詞について触れたいと思います。

「ただちに健康に被害がでる値ではない」

そう言われても、福島県産の野菜を買うのに戸惑いが生じても、無理はありません。

それに、この言葉を聞くと、普通こう思います。

「暫らく経つと健康に被害がでるのか?」


……そう思うのは当然です(^^;。


正解は、「暫く経つと、健康に被害が出る確率が上がる」てす(^^;。


……「からかっているのか?」と突っ込まれそうな台詞です。


ですが、放射性物質というややこしい物質の特性から言うと、そう言うしかないのです(^^;。

放射性物質は放射線を出します。放射線は、物体を透過します。その際、透過する物体にダメージを与えます。生体に当たった場合、当たった放射線の線量によってダメージを受けます。

問題は、細胞がダメージを受けるのは放射性物質の量ではなく、放射性物質が出す放射線の線料である点です。

これが普通の毒物なら、毒の摂取量によって決まります。その量も動物実験から導けます。
マウスの体重と人間の体重の比例式で、人間の致死量が出せます。
たとえばマウスに河豚毒であるテトロドトキシンを与えたとしましょう。
死亡時の摂取量から、簡単な計算式で、人間の致死量が導けます。

マウス死亡時のテトロドトキシンの摂取量×人間の体重÷マウスの体重=人間の致死量
という具合にです。これを実験数を増やし、統計処理を行い、より正確な値を求めます。

実際はもう少し複雑ですが、基本はこう思ってくれて間違いありません。

ところが、放射性物質の場合は、放射性物質を何グラム摂取したかではなく、どのくらいの線量の放射線を浴びたかによって決まります。

ですが、この放射線の浴びた量の計算が、とっても難しいのです。

それは、放射線の単位に表れています。
政府の発表で放射線を表す単位として、ベクレルとシーベルトが使われます。
この他にあまり使われませんが、グレイという単位があります。
ところが、その意味をろくに説明してくれません。

大雑把に言うと、次のようになります。

ベクレル :放射性物質が放つ放射線量の単位
グレイ :生体に届く放射線の単位
シーベルト:生体が浴びた放射線の単位

グレイとシーベルトの違いが分かりにくいと思います。
放射線には、種類があります。α線、β線、γ線、中性子線といった具合にです。
それぞれの放射線は、物体の透過能力が違います。α線は紙1枚で遮蔽できるが、γ線は鉛の板でもないと透過できないという具合にです。その透過能力の違いによって、生体にどのくらい吸収されるかが、違ってきます。肌に届いた放射線に、放射線の種類による係数を掛けた値が、シーベルトで示されます。


……こう書いても、さっぱりわからないと思います。


一寸例をあげて説明しませう。

まず、ストーブを思い浮かべてください。
ストーブなら何でもいいですが、とりあえず薪や石炭を燃やすダルマストーブにしませう。
そして、色んな人がストーブに当たっている姿を思い浮かべてください。

このダルマストーブがどのくらい強い火で燃えているかを示す単位が、ベクレルに相当します。

これに対し、ストーブに当たっている人に届いた熱量を示す単位が、グレイに相当します。

そして、その熱量が実際にどのくらい肌を温めたかを示す単位が、シーベルトに相当します。

放射性物質が放つ放射線の量、ベクレルを測るのは、それほど難しくありません。
肌に届く放射線の量を測るのも、それなりに計測できます。
ですが、どの位肌が吸収したかについては、どれほど正確に計測できるでしょうか?

ダルマストーブに何人もの人が当たっている場合、どの人がどの位温まったかと、調べることができるでせうか?
ダルマストーブにあたっている人が、大人か子供か、どんな服を着ているか、どのくらいの距離があるか、こんな要素によって温まり方は全然違ってきます。

放射線に曝されたときも、基本的にはこれと同じです。
仮に肌まで届く放射線の量が同じでも、皮下脂肪や筋肉の厚さで、内部に届く放射線の量が違ってきます。

こうなると、同じベクレルの放射性物質に曝されても放射線に近くて体の小さい人の方が、放射線に遠くて体の大きい人よりも、実際に浴びる放射線の量が多くなります。

これだけ照射された線量についての変数が多くなると、どのくらいの放射線を浴びたかを客観的に計測するのが、大変難しいのです。浴びた量を客観的に測る方法が難しいのですから、その影響を調べる方法も難しくなります。

この上、放射性物質の種類や半減期などのデータも考慮しなければいけません。そして被害を受けても、生物には回復力があります。

……つまり、実際の計算は更にややこしくなるのです(^^;。

実際、動物実験の結果を人間に当てはめようとしても、上記した毒の致死量の値のように綺麗な結果が出なくなっています。その結果、放射性物質に曝された場合の健康被害が出る放射線の予想値が、ものすごく幅の広い値になります。

原子力に否定的な人は、小さな値を持って、『原子力はこんなに危険だ!』と主張します。
原子力に肯定的な人は、大きな値を持って、『原子力はこんなに安全だ!』と主張します。

両者の差を埋めるためには、人間に似た動物で実験するしかありません。
しかし、それもすごく難しいのです。

放射線による健康被害が生じるかは、次の2つに分類できます。

@大量の放射線を短期間に浴びる。
A放射性物質を体内に取り込み、長期的に微量の放射線を浴びる。

@の場合は、火傷の被害に似ています。大きな火傷をした場合、ある程度火傷が大きくなると、生命にかかわります。放射線も同様で、一度にある一定量以上の放射線を浴びると、生命にかかわります。

実際、原子力関係の事故で重篤になるケースは、短期間で大量の放射線を浴びた場合です。
最近だと、東海村で処理工程を端折って、バケツで臨界が起こったケースが相当します。
ちなみに同様の事件は、1950年代のアメリカなどでも起きています。

これは放射線を浴びて、皮膚や神経細胞などが重篤なダメージを受けた場合です。
ところが、一定量以下の放射線なら、症状が現れません。というより、短期間の健康被害がありません。

火傷をするには、熱い物に触らなければいけない。でも、熱い物の熱量が少なければ、火傷はできません。放射線もこれと同じです。これは動物実験などでも、ある程度正確な値が導けます。

問題は、Aの長期的な影響の方です。
放射線を浴びると遺伝子などにダメージを得て、長期的に癌などの健康被害が出る確率が上がると考えられています。ところが、放射線を浴びて癌になるとしても、その実験がとてつもなく難しいのです。

まず、すぐに健康被害がでないけど、癌になりそうな放射線量を浴びせるというのが、難しいです。そして癌という病気は、若年性のケースを除くと、10年20年という長いスパンが経たないと、癌になったか分からないのです。放射線を照射された場合も同様です。当然、検証実験にも10年単位の時間がかかります。

10年単位の実験になると、仮に癌ができたとしても、それが放射線の影響なのかどうか、立証も検証も不可能に近いです。放射性物質よりも煙草の方が、危険であるという結果が出かねません。というか、実験期間が10年を超えると、癌になる前に寿命が来てもおかしくないケースが珍しくありません。

実験をしようにも数十年の寿命がある人間に似た動物となると、霊長類ぐらいですが、数十年単位で経過観察ができるかというと、不可能です。霊長類を数十頭単位で、10年単位の時間をかけて、放射性物質の影響を調べる。どの位経費がかかるのでしょうか、頭が痛いです。いや、経費云々以前に、ワシントン条約の関係者が、飛んできそうです。

もっと簡単に癌になる寿命の短い小さい動物で癌が発生したとしても、上記のように体重あたりの比例をかけても、成立するかどうかわかりません。というより、成立しません。

となると、立証できるのは、短期間で癌が進む小さい生物だけということになります。

実際にチェルノブイリの原発事故で、事故の影響で癌になったという統計データが出たのは、小児性の甲状腺癌だけでした。

なお成人の癌は、他の地域に比べて、統計的に差が認められませんでした。

もっとも、これには冷戦崩壊が前後したため、ロシアに西側の医療技術が流れ込み、癌の発見技術が格段に進化したということも影響しています。以前よりも小さな状態での癌が見つかるようになったため、全体の癌の発見率が上がり、チェルノブイリの影響と区別できなかったのです。

つまり、放射線にどの位曝されたら、長期的にどのように健康に悪影響がでるのか、きちんとしたデータがないのです。

無論、短期間に大量の放射線を浴びると生命にかかわりますが、それは核分裂反応が身近に存在しないと起こりえません。それこそ東海村の事故現場や福島の原発の炉心近くにでも行かないと、起こりえないでせう。

放射性物質を体内に取り込んだ場合、それがどのような健康被害を及ぼすかについては、断言できるデータがないのです。

となると、ある程度幅のある数値しか、用いることができません。当然、原子力反対派は小さい数字を、原子力賛成派は大きい数字を採用してきました。

どちらが正しいか、どちらが間違っているかは、分かりません。
そう断言できる数値がないのです。

日本は、今まで原子力反対派に近い数値を持って、原子力の健康被害を図ってきました。
今回の原発事故で、それだと作業が追いつかないので、原子力賛成派の意見に近い数字を採用するようになったのです。

政府が、原子力の安全基準値を引き上げたのは、こういう事情があります。

政府の言う「ただちに健康に被害がでる値ではない」という言葉は間違いではありませんが、正確でもありません。

『「ただちに健康に被害がでる値ではない」が、どの位で健康に被害がでるのかは分からない。浴びた放射線が増えているので、健康に被害が出る確率が上がるとしか言えない』というのが正解です。


……そんな言葉、責任のある人間にはいえません(^^;。


つまり、放射性物質と健康との関係は、まだまだ分からないことの方が多いのです。
だからといって、そのまんなことを1から10まで説明するのは、不可能でせう。


……よくまぁ、そんな物騒なものを使っているなぁ(^^;。


物騒であっても有益なので使っているのでせうか、もう少しそこら辺を世間に知らしめても罰は当たらないと思います。

ともあれ、放射線が、健康にいいか悪いか、分からない以上、どういうのも自由なのです。
実際、微量の放射線は健康によいとすら考えられています。

分かりやすい例が、ラジウム温泉などの放射能泉です。

ラジウムは、19世紀末にキュリー夫妻が発見した放射性物質です。
放射性物質の弊害が広まるまで、原子力は科学の最先端で、未来を明るく照らすものと考えられていたのです。当然、最先端の物質が健康に有効いいのは、当然だったのです。だからラジウム温泉は、体にいいと考えたのです。微量の重金属を含んだ温泉なら、確かに熱量は豊富でしょうから、よく温まることは、間違いないでせう。

ただし、ラジウム温泉の効用は、医学的には証明されていません。

なお、先日乳児に飲むのは危険といわれた金町の浄水場での放射性ヨウ素のベクレル数は、某ラジウム温泉の五十分の一の値だという話です。温泉は、入るだけでなく、飲むという方法もあります。他にも温泉卵のように、温泉を使った食品は一杯あります。


……放射性物質を含んだ食品に対する前提条件が、吹き飛んでしまいます(^^;。


実際、地球上で自然に放射線が強い場所があります。そこの住民が健康であるから、微量の放射性物質は健康にいいと主張する方もいるくらいです。

無理やりまとめると、放射性物質は危険な物質です。
健康被害が確実に出るのは、大量の放射線を短期間に浴びた場合です。
微量の放射性物質を体内に取り込んで、微量の放射線を長期間浴びるケースでは、小児の甲状腺がなどを除けば、被害を確実に立証が難しいです。

大体、プルトニウムをはじめとする放射性物質は、過去の核実験でもっと大量にばら蒔かれていいます。タクラマカン砂漠とか、ウクライナの奥地とか、ビギニ岩礁と比較して、今回の福島原発周辺のプルトニウム濃度が高いのかどうかぐらいのデータは、ないものなのでせうか?少なくともジャーナリストが調べてくれてもおかしくないと思うのでうすが、そういう記事をお眼にかかったことはありません。

福島の原発事故では、津波の被害者がでましたが、放射性物質が原因で亡くなった方は一人もいません。汚染水で被曝した作業員も、数日で退院しております。

だから安全と主張する気はありません。
継続して観察が必要ですが、過度の不安を持つ必要がないと言っているだけです。
つまり、今までとかわりません。
それですので、福島産の野菜に必要以上の恐怖感を持たなくてもいいと思います。


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posted by Jinguzi at 12:42| Comment(1) | TrackBack(0) | NEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
せうという表現は読みづらい
Posted by at 2011年05月24日 09:03
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