2011年04月15日

今更聞けない原子力の基礎知識D 放射性物質の情報は隠せるのか


今回の福島原発の事故で、事故の規模がレベル7に引き上げられたことについて、事実を隠蔽していたとの批判があります。ですが、放射性物質の特性を考えると、それは難しいと思います。

放射性物質というものは、極微量でも観察できます。なぜなら放射線を出しているからです。イメージ的には、大音量で音楽を流しながら走る車を思い浮かべてください。


……街中で走るアレは、迷惑です(^^;。


今回、福島の原発から漏れた放射性物質は、総量は数百グラムという試算がありました。
その一部が大気に乗り、拡散していき、世界中で観察されました。

放射性物質は、この特性を利用して様々な分野で用いられています。
医学の分野もその例外ではなく、癌の検査などに放射性トレーサーが使われています。

癌というものは、通常の細胞よりも遥かに増殖力があります。
というより通常の細胞が、何らかの理由で自己増殖機能が暴走したものが、癌細胞なのです。癌細胞は、通常よりも繁殖力があるため、必要とされるエネルギー量も多いです。

癌を疑われる患者に、放射性トレーサーを投与し、何処に集まるかを観察します。
放射性トレーサーが集まった場所を調べれば、効率よく癌のある場所が特定できるというわけです。その上でレントゲンなどと組み合わせると、従来よりも少ない枚数のレントゲン写真で、癌を特定できることになります。

海外では40年ぐらい前から普及していますが、日本では原子力に対してアレルギーがあったため、普及が遅れております。このため、放射性トレーサーは健康保険適用外です。

ちなみに、使われる放射性物質は、極微量で人体に影響がない範囲の物です。
そのような微量でも、検査をすれば何処にあるか特定できます。

なお、わが国は放射性トレーサーが普及しなかったおかげで、CTやMRIといった画像解析が発展しました。放射性トレーサーより初期のCTの方が放射線量は多かったらしいのですが、その辺を突っ込む人は少なかったようです(^^;。

放射性トレーサーは、医学だけでなく様々な分野で用いられています。

この特性を知ると、放射性物質の拡散は、隠しようがないという答がでます。

政府の発表を信用できるかどうかは置くとして、放射性物質が大気中に漏れた場合、世界中で観測できるからです。多少数字をごまかすことぐらいはできるかもしれませんが、長期的には不可能でせう。

皆さん綺麗に忘れていますが、北朝鮮が核実験を行ったとき、大気中の放射性物質から核実験を確認したではないですか。

北朝鮮の核実験は、地下で行われ、実験そのものも失敗し、放出された放射性物質は極微量でしたが、それでも観察は可能でした。そのデータから、核爆発の規模の特定までやっています。もっともこれには地震計のデータなども加味されましたが。

今回の福島の原発事故は、原子炉外壁が爆発する瞬間がTV中継されたのです。あれを見て計測をはじめない関係者はいないでせう。昨今は、スーパーコンピュータで大気中に拡散する放射性物質を、シミュレートできます。正確な値の予想は、以前より可能でせう。

となると、日本政府側が原子力関係の事故で嘘をついても、利益が少ないという答がでます。もしそれでも嘘をつくとしたら、放射性物質の特性を理解していないということになります。

ただ、放射性物質に限らず、元素を同定するには、時間がかかります。観測できる放射性物質の量が少なければ、なおさらです。このため、放出量などを計算するには、近い方がデータの精度があがります。

日本と他国の予想が違っているケースは、その辺りに原因があるでせう。もちろん、日本は放射性物質以外のデータもありますので、有利なのは間違いありません。

現に、原発の事故発生当初、アメリカは福島原発から80km圏をから、自国民に退避するように指示をだしました。無論、動地域内で活動している軍人さんは、別です。この件に関しては、本当に頭が下がります。

後に、これは流失した放射性物質の量を過大に見積もっていたため、アメリカ側が当事の日本政府の20km圏からの退避勧告が妥当だと発表しています。もっとも、日本側の発表も、その後の調査で特定の場所に放射性物質が集まっていることが分かり、退避する地区が変更されましたが。

海外でしかも震災中で、外国人が容易に動けないことは、当たり前です。そうなると、安全域を過大に見積もって、退避勧告を出したアメリカ側の発表は理にかなっていると思います。

今回、事故の規模が国際評価尺度でレベル7に相当すると発表されたのは、隠しようがなかったという答が出ます。暫定的とはいえ、レベル7と認定せざる得ない量の放射性物質の放出が確認できたのでせう。

そしてこの時期に、政府がレベル7だと認めたのは、レベル7と認定するに十分な証拠が溜まるまで時間がかかっただけだと思います。そして、影響を最小限にするために、諸外国や各種機関に連絡をする時間がかかったぐらいでせう。

ただ、チェノブイリと同じレベル7としても、チェルノブイリが大爆発を起こして、周囲に放射性物質を広範囲に撒き散らしたのに対し、福島は狭い範囲で放射性物質が漏れたようです。

つまり、被害そのものは、チェルノブイリより遥かに小さいという予測がたちます。

というより、今回の事故はチェルノブイリやスリーマイル島の事故と、状況が違いすぎるという意見を散見します。チェルノブイリやスリーマイル島の事故は、原発の運用に問題があり、発生しました。福島の事故は、マグニチュード9の地震と10mを超える津波の結果、発生しました。

国際評価尺度では、漏れた放射性物質の量でレベルが決まります。細かい規定は色々とあるようですが、基本はその辺りにあるようです。事故そのものの大きさを決めているわけではありません。というより、今回のような事態を考慮しないで、国際評価尺度が作られたという方が実情に近いと思います。

地震に例えると、国際評価尺度はマグニチュードに相当するのでせう。マグニチュードが大きくても、震源との距離によって震度は異なります。そして、被害そのものに直結する震度についての規定が、考えられていないのでしょう。

今回のレベル7認定が遅れたのも、その辺りを考慮された可能性があります。
報道を見ていると、放出された放射性物質の量そのものはレベル7に相当するが、周囲に与える被害はレベル4か5位が妥当な評価という意見が見られます。認定によって、世界的な評価や風評被害が決まります。従来の基準だけで考えると、レベル7に認定するのに、被害はレベル5ぐらいとなると、発表に慎重になっても無理はないと思います。
勿論、放射性同位体の認定に時間がかかることなどもあるでしょう。

今回の大震災は、マグニチュード9でした。宮城の一部では震度7を記録した場所があります。これに対し、東京では震度5弱でした。同じ地震でもこれだけ震度が違うのです。揺れの違いは、被害の違いに現れています。

これから考えるに、チェルノブイリと今回の原発事故は、マグニチュードが同じだったが、震源からの距離の違いから、震度が違っている。だから被害も違ってくる。ただ、評価の基準がマグニチュードしかないので、色々と混乱が生じている。このようにイメージすると、実情に近いのではないかと思います。

実際、海外の報道を眺めていると、IAEAですら、今回の事故はチェルノブイリとは別物だと主張しています。あのロシアが、この件に関して過大評価だと主張しています。国際評価尺度の基準そのものを見直した方がいいのではないか、という意見も散見します。

こういうものは、どんなに識者が訴えても、実際にことが起こるまで誰も真剣に考えてくれません。例えば地震の対策が国家レベルで行うようになったのは、関東大震災以降です。
そして、大地震が起こる度に、様々な基準が見直され、新たな対策が講じられてきました。

これは他の国でも同じです。例えばアメリカは、9.11のテロ事件以降、非常事態の対策組織や制度を大規模に改変しています。

見方を変えると、世界的に見ても、大規模な原発事故は数える程しかなく、基準や組織作りが不十分だったのではないかと思います。


……原発事故が多くても困りますが(^^;。


今回の事故は、様々な不幸な事態を巻き起こしています。
今後はこのような事態を起こさないための対策や、組織作りをするべきだと思います。

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posted by Jinguzi at 19:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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