2011年06月16日

抜歯ミスで4千万円の賠償命令


抜歯ミスの裁判があり、名古屋地裁が4千万円の賠償命令を判決しました。




以下に記事を引用します。

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抜歯ミスで障害、歯科医に4千万円賠償命令 名古屋地裁
2011年6月15日21時6分 asahi.com

 親知らずの抜歯手術後の治療ミスであごに重い障害を負ったとして、名古屋市の40代の男性が同市港区で開業する歯科医師に約1億8千万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁(永野圧彦裁判長)は15日、歯科医に約4千万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、男性は2004年8月、右下の親知らずの抜歯手術を受けた直後に感染症となり、あごの骨の骨髄炎を発症。その後、別の病院であごの骨の一部を切除するなど15回の手術を受けたが、現在も激しい痛みがあり、流動食しか口にすることができなくなった。

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簡潔に述べているので、細かいことはわかりませんが、お気の毒な話です。
被害にあわれた患者さんのことを思うと、言葉がありません。

人類の顎は小さくなる方へ進化しています。ところが、歯の本数や大きさはあまり変わっていません。このため、歯の生えるスペースが足りなくなるという事態が起こります。
顎の一番後ろに生える親知らずは、この事態の犠牲者です。
親知らずが生えないという方が、大勢居ます。それどころか親知らず自体がないという人も多いです。

生えてこないだけならまだいいのですが、厄介なのが横向きに生えてくる場合です。生えるスペースがなく、当然のことながら抜くのが大変です。基本的に生えてこなければ害はないので放置でいいのですが、時々、中途半端に頭だけ顔をだしている場合があります。そうなると、歯ブラシが届かないため、虫歯になりがちです。殆どが歯茎に埋もれているため、虫歯の治療が困難です。

となると、抜歯しか選択肢がなくなります。
術式としては、以下の通りになります。

    @局所麻酔
    A歯茎を切り開く
    B骨に埋もれている場合、骨をノミで削る。
    Cエアタービンにて、歯を分割し、歯を抜くスペースを作る。
    D抜歯
    E歯茎を縫う。

……書いているだけで、痛そうです(^^;。

実際は麻酔が効いているので、手術中は痛み自体は殆どありません。
麻酔が切れたら、痛みがでる場合がありますが(^^;。

また、手術とはいえ、切ったり削ったりするわけです。人工的に怪我をさせているわけです。骨を削る量が多かったり、手術に時間がかかると、炎症が酷くなります。また感染の確立も跳ね上がります。親知らずを抜いて腫れるというケースは、こういうことになります。逆を言えば、手術が短時間で済めば、腫れるケースは減るわけです。

実際は、口の中のことです。唾液が出ます。切るわけですから出血もします。
暗くてグジョグジョの中でやるわけです。どうしても切る範囲が広くなり、時間が長くかかることになります。

手術の腕がいいというのは、切る範囲が狭く、短時間で終わらせることを意味します。
当然のことながら、難しいです。そういうことができる先生は少数です。

そして、親知らずの抜歯を更に困難にしている理由があります。
親知らずの周囲には、重要な血管や神経、筋肉が一杯あります。
切る場所や削る場所を一寸間違えると、その辺りを傷つける可能性があります。

そういうミスを犯さないため、歯科医は解剖学を学びます。しかし、人間の身体はバリエーションに富んでおり、解剖学の教科書と実際の血管や神経の位置が違うということはよくあります。それを防ぐために、術前にX線写真やCTを撮ります。

ですが、実際手術するとなると、手術をする場所は、暗くてグジョグジョです。
適切な判断ができるかというと、中々難しいです。

そして、手術が難しい上、術後の管理も大変です。
上手く管理しないと、治癒が上手く出来ず、細菌感染して、手術部位が腐ってしまうケースがあります。腐骨とかドライソケットという病名がついています。

歯茎が腫れているのですから、上手く物がかめません。必然的に食事をとるのが困難になります。また、場所によっては顎が上手く動かなくなります。今回のケースは、この最悪の事態のようです。

治療法は色々とありますが、腐骨部位が大きい場合は、外科手術で取り除く場合が多いです。そして、上記したように親知らずの周囲には、重要な器官が一杯あります。
只でさえ手術が難しい場所が、より困難になるわけです。そして、このケースでは実際に難しかったようです。

この記事のケースは、色々と最悪のケースの積み重ねとしか思えません。
つまり、抜歯時に、どこか重要な器官を傷つけてしまい、そのうえ感染して、治癒を困難にさせたと。そしてその対処方法で、不信感を増やすような事態が幾つもあったと。


……お気の毒としかいいようがありません(^^;。


こういう事態を避けるため、開業医は大学病院などの設備が整った大きな病院に親知らずの抜歯を依頼するのが普通です。私のところでもそうしています。

どうしてこのような事態になったのかは、わかりません。
というより、細かい事情がわからない段階で、あれこれ推察しても始まりません。

患者さんにとって、よい結果が訪れることを願わずにはいられません。


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posted by Jinguzi at 19:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 歯科 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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