2014年09月28日

読書日記 30年ぶりにブラック・ジャックを読んでみた。#03 ブラック・ジャックが無免許医の理由を考える。


以下の文章は、Kindle版ブラック・ジャック1巻のネタバレを含みます。
未読の方は、ご注意ください。

では、ここまで考えていくと、問題の根源はブラック・ジャックが医師免許を取らないことに尽きてしまいます。第1回に書いたように、医師免許を持つことと、高額な医療費を請求することは、全く矛盾しないで両立します。

そして健康保険の収入以外で、医師が高額な報酬を取得する方法はありました。

当時の医療の習慣では、健康保険外の治療費を支払うのは、むしろ当然でした。請求書が渡されたりしませんが、付け届けやお礼という形で健康保険外の治療費の相場があり、偉い先生に診てもらうには、その相場を健康保険外で渡しているのが、当然でした。山吹色のお菓子に相当する付け届けが、偉い先生の下に届けられていたのです。

これは、健康保険制度の弊害と過去の因習の混合物というべきでしょう。

 健康保険制度は、全国一律の同じ料金で、患者に同じ治療を行うことを保障しました。
ところが、免許を取り立ての新人医師とベテラン医師の報酬が同じという結果が生まれたのです。両者の間に治療のクォリティに差がありますが、報酬は同じなのです。不満が生じないほうがおかしいです。そのため、よりよい治療を受けるため、偉い先生に診てもらうため、偉い先生に付け届けをするという以前からの因習が、半ば公然と行われていたのです。

 悪徳商人が、悪代官に山吹色のお菓子を届けるのと、構造的には変わりありません。
というより、明治時代ぐらいまでは、お役人が関連業者から賄賂を貰うのは、悪徳ではありませんでした。賄賂と挨拶の習慣との境界があやふやだったというべきでしょう。賄賂を贈るにもちゃんと相場があり、賄賂は談合の一環として、組織同士の潤滑剤として使われていたのです。

 勿論、江戸時代でも建前では賄賂は非難されましたが、本音の世界では、有る程度の悪徳は見逃されておりました。賄賂が大きく非難されるのは、潤滑油としての役割を超え、目に見えて私腹を肥やすなどの弊害が大きくなったケースがほとんどです。

 医療業界は、古い因習を数多く残していました。ブラック・ジャック連載当時はこの種の因習が色濃く残っていた時代でした。ブラック・ジャックが清濁合わせて呑める人だったら、大手病院なり大学病院に残り、手術の腕を買われ、偉い先生に可愛がられ、高額の報酬を得ていたことは間違い有りません。

 そうなると、ブラック・ジャックは、何ゆえ医師免許を取らなかったという疑問が出てきます。

 ブラック・ジャックが、因習にとらわれた病院に嫌気が差し、社会的弱者に無償で働きたいというのであれば、わからなくもありません。逆にそういう姿勢をとっていれば、医師連盟も庇いやすく、警察や厚生省も動きが鈍かったでしょう。

 しかし、実際は患者に法外な医療費を請求して、問題になっています。

 医師免許を取得するときに何かのトラブルがあり、免許を取ることに抵抗があったのでしょうか?ですが、その手の描写が作品で明確に書かれたことがありません。

 医師というものは、高度な知識と技術とそれを司る倫理が必要です。医学部の教育にはこれらのことがカリキュラムに組み込まれています。そして、医療倫理には法律に従うことが明確に組み込まれています。

 治療行為、特に手術にトラウマがあり、手術ができないというのであれば話は分かります。実際手術が駄目で、内科や精神科へ進んだ医者の話を何度か聞いたことがあります。ですが、手術は嬉々としてやるのに、免許を取るのは嫌というのは、実におかしな話です。

 名医と呼ばれる高度な医療技術を有しているが、倫理的に問題がある医師を描くヒューマンドラマ。


……どう考えても、おかしいです(^^;。


 大体、本人が医師免許を取得しないとしても、恩師をはじめとする周囲が許すわけがありません。徒弟制度が生きている世界で、師匠の言葉に逆らえるわけがありません。何より、ブラック・ジャックが世界一の外科医と尊敬する本間丈太郎が、許すはずがありません。本間丈太郎が作中のように偉い先生でしたら、ブラック・ジャックを呼びつけ、医師免許を取るように説教したに違いが有りません。ブラック・ジャックが恩師であり、命の恩人である本間丈太郎の言葉に従わないとは思えません。

 ところがブラック・ジャックの作中では、その辺りを明確に描かれていません。
それが一番肝心だというのにです。

これらの矛盾を説明できる推論が一つあります。

それは、手塚治虫は、その辺りを深く考えていなかったのではないかと、いうことです。

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posted by Jinguzi at 20:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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