2015年11月19日

歯が痛いから歯医者に行くのに、そこで痛い思いをするのは、理不尽だと思いませんか? #102 歯の解剖学


『地図にない街を探すためには、最初に地図が必要である』

若い頃に聞いたさたまさしの歌にそんな一説があったと記憶しています。

専門家は専門用語を使います。何故かと言うと、専門用語を用いないと、細かい意味まで説明できないからです。そして、専門家とは、素人さんに専門用語を用いないで自分の専門を説明できる人のことをいいます。

そういう次第で、専門家を自負している私としては、この話は極力専門用語を使わないつもりでおります。ですが、全く0というわけには行きません。図解入りで説明しますので、お付き合い頂けると嬉しく思います。

……『最初から逃げ口上を打つな』という突込みには、御免なさいと頭を下げます。ご勘弁を。


ともあれ、医学を学ぶ場合、まず最初に健康な身体の仕組を習います。ついで病気の仕組を習い、最後に治療の方法を習います。

虫歯の痛みの仕組みについて話をするわけですから、歯の構造を最初に話さなければいけません。

まず最初に歯ですが、実は皮膚の一種です。よく骨の一種と勘違いされますが、進化の過程で硬くなった皮膚です。哺乳類は内骨格です。外部に骨が出ているわけがありません。爪や髪の毛と一緒です。大事なことだから2回言います。歯は、骨ではなく皮膚の一種です。

硬い皮膚である歯は、基本的に2種類の硬組織と硬組織に覆われた軟組織からなります。
硬組織は、エナメル質と象牙質になります。軟組織は歯髄です。
この他に歯を支える歯周組織があります。

Fig102-01.gif


ともあれ、図に示しますように、硬組織はエナメル質と象牙質になります。
基本的に口の中に露出している部分はエナメル質です。歯周病が進行すると歯肉が退縮し、象牙質が露出することが多いですが、それは別項で詳しく述べることにします。

成人のエナメル質は、98%がハイドロオキシアパタイトです。一般的にはアパタイトと呼ばれています。『芸能人は、ハワイが好き』という謎のキャッチコピーの歯磨き粉のCMで散々使われましたので、名前を知っている方も多いと思います。

化学式はCa10(PO)6(OH)2 で示されます。塩基性リン酸カルシウムです。
骨の主成分でもあります。

エナメル質は、人間の硬組織で最も硬く、モース硬度で7、水晶に匹敵する硬さを持っております。
エナメル質の内側には、象牙質があります。成分は70%がハイドロオキシアパタイトです。20%が膠原繊維などのタンパク質、残り10%は水分です。エナメル質より軟らかく、モース硬度は5〜6ぐらいです。

このエナメル質と象牙質ですが、ハイドロオキシアパタイトの結晶を中心に作られています。
その形は、管を束ねた構造になっています。イメージ的にはストローを束ねた姿を思い浮かべれば近いと思います。何故固まりでなく管かといいますと、中心の穴は言うならばメンテナンスホールなんです。歯は、毎日モノを咬んでいます。歯同士が当たることもあります。言い換えると硬い歯がカンカン当たっているのだから、当然壊れます。これを脱灰といいます。
壊れた部位を放置するとドンドン歯が削れてしまいます。だから壊れた分を補充しなければいけません。その際に塊のままだと補充が不可能です。補充する物質を送る通路が必要です。そのため、エナメル質や象牙質には、小さな管を束ねた構造になっているのです。

ちなみに、この補充することを再石灰化といいます。これもガムのCMのお陰で有名になりました。
脱灰と再石灰化は、セットになっています。私はこれが歯の新陳代謝だと思っております。何故か、歯医者は脱灰と再石灰化は、空に雲が集まって雨が降るのと同じ自然現象としか考えておりません。

この話を歯医者にすると、そんなこと考えたこともなかったという顔をされてしまいます。
凄く頭が痛い現象です。これについては、後の章で触れたいと思います。

閑話休題。
このエナメル質と象牙質には、神経が存在しません。
神経というのは、簡単に言うと信号を伝えるケーブルです。基本的に脳から命令を伝える神経と末端のセンサーが受けた情報を脳に伝える神経の2種類があります。外部からの刺激を伝えるのは、後者です。この場合、神経の末端はセンサーになっています。

外部からの刺激をセンサーで観測し、その観測データをケーブルを通して脳に伝えます。
脳は、与えられた計測データから、その事象を読み取ります。

目から入ってきた計測データは、画像となって判断されます。鼻から入った計測データは、匂いとして判断されます。耳から入った計測データは、音と判断されます。

このように信号を脳へ伝えるのですが、その中に痛みの信号があります。外部からの刺激や炎症がある一定の水準を超えたとき、刺激が加わった部位の細胞が痛みの信号を発します。これが神経を伝わって脳に伝えられると、痛みを感じるのです。

痛みというものは、非常事態の信号なのです。言うならば火災報知機のサイレンのような存在です。
鳴り響くサイレンは、耳障りだが放置しておくと大変なことになります。だから早く対処しなければいけません。痛みもこれと同じです。

上記したようにエナメル質も象牙質にも神経はありません。だから、エナメル質も象牙質も穴が空いても基本的に痛みを感じません。そういう次第でエナメル質の表層にできた初期の虫歯なら、麻酔をせずに削っても痛くないのです。これは、伸びた爪や髪の毛を切っても痛みがないのと同じです。

ただし、深爪をして爪の内側のお肉を切ったり、、髪の毛をひっぱって毛根を刺激したりすると、痛くなります。これと同じように、歯の深いところを削ると痛みがでます。

虫歯で大穴が開いている場合は、最初から深いところを削ることになります。
深爪を切りまくるようなものです。

……痛いのは、当然ですね。

そして、エナメル質と象牙質に囲まれている軟組織が歯髄です。

よく歯医者で『歯の神経』というような言い方をしています。これは便宜的にそう読んでいるだけです。実際は歯の内側から栄養を供給する器官です。毛根や爪の付け根に相当します。
神経組織は含まれていますが、その割合は5%ぐらいです。

5%しか神経組織が存在しないのに、なにゆえ歯髄が歯の神経と呼ばれているかというと、歯に神経組織が存在しているのは、ここだけだからです。髪の毛には神経組織はありません。ですが、毛根には神経組織があります。歯髄は、毛根に相当する組織だから神経が存在します。

他に神経組織があるのは、歯周組織という歯を支える組織です。

エナメル質と象牙質という厚い硬組織に覆われているため、歯髄には基本的に外部刺激が届かない構造になっています。本来なら刺激が届かない場所に、刺激が届くようになってしまうのが、虫歯という病なのです。

つづいて歯を支える歯周組織について説明します。

まず、歯を支える歯槽骨。歯を入れる桶のような格好をしているため、こう呼ばれています。
この歯槽骨に直接歯が埋まっているわけではありません。その間にクッションとなる軟組織があります。これが歯根膜です。歯根膜は、歯と歯槽骨をつなげると同時に、サスペンションとセンサーの役割を担っています。

健康な状態だと歯の中にある神経には、外部からの刺激が伝わりません。このため咬んだ時の情報は、歯の神経には伝わりません。では、何故咬んだ時の感覚があるかというと、この歯根膜の中にある神経のお陰です。

歯根膜の厚みは0.1mmらいしかありません。この内部に神経終末が含まれて居ます。歯根膜に存在する神経終末は、一種の加速度センサーです。歯を噛むとこの軟組織の厚さ分だけ沈みます。その際に、どの位のスピードで噛んだかを計り、脳へ送ります。脳は、スピードから食べ物が硬いものか軟らかいものかを判別し、顎の咬む力を調節しています。

ご飯に小石が混じっていて、噛むと痛いという経験をしたことは誰にもあると思います。
噛んだ時の歯根膜の変形具合から軟らかいものと判断して、噛むスピードを上げたのに硬いものが混じっているから、痛くなるのです。最初から硬いものでしたら、そっと噛む様に力加減を調整しています。

では、何故歯の中の神経ではなく、歯の周りにある歯根膜の神経のデータで咬んだという感覚をかんじるのでしょう。それは、歯根膜の感覚が延長され、歯自体の感覚と脳が判断するからです。
箸を持って食べ物を掴むと、掴んだという感覚が指に伝わります。箸でお肉を掴んだ感覚と野菜を掴んだ感覚の違いがわかるくらいに感じることができます。逆をいうと、指先数十センチまで指の感覚が延長されるのです。
咬んで歯が沈みます。この刺激を歯根膜が捕らえますが、それは歯根膜が沈んだのではなく、歯と一体化した歯根膜が沈んだと脳は捕らえるのです。言い換えると、延長された感覚によって、歯根膜ではなく、歯の感覚として脳が認知するのです。

歯ではなく、歯の周りにある神経が、咬んだ感触を伝えるのです。そのために、高密度な神経が歯根膜に存在しているのです。

そして、歯槽骨全体を覆っている軟組織が、歯肉です。
俗に歯茎と呼ばれるピンク色の粘膜のことと思っていただけると間違いありません。

重要な点は、これらの全ての組織に神経があります。というより、神経がないのは爪や毛や歯などの皮膚の末端だけです。

よく歯髄をとった後に歯が痛いということがあります。この際に痛いのは歯ではなく、歯周組織であることが多いです。歯髄の炎症が歯周組織までおよんでいて、歯髄を切除しても歯周組織の炎症が残っているので痛いと考えられています。

この場合、原因である歯髄を除去すると、歯周組織の炎症も収まると考えられています。


大雑把ですが、この辺りを認識して貰えると助かります。


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posted by Jinguzi at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 歯科 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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